ホテルライクにも種類がある。あなたが憧れるホテルはどのタイプ?
「ホテルライクな家にしたい」と施工会社へ伝えたところ、大理石調の床と間接照明を提案された。
そんな話を聞くことがよくあります。
もちろん、大理石も間接照明も悪くありません。
ただ、それだけでホテルライクになるのであれば、ホテルの設計はずいぶん簡単です。床を石目調にして、天井の端を光らせれば完成。世界中のホテルデザイナーが、少し暇になってしまいます。
そもそも、ホテルライクとは一つのインテリアスタイルではありません。
パリのクラシックホテルと、北欧の小さなデザインホテルでは、見た目も空気感もまったく違います。それでも、どちらも立派なホテルです。
つまり、ホテルライクな家を考えるときに大切なのは、「ホテルっぽいものを集めること」ではありません。
自分は、どのようなホテルで心地よいと感じるのか。
旅行に行くと決めたら、滞在を想像しながらホテル選びを始めますよね?
まさにあれです。
その答えを見つけることから、住まいづくりは始まります。
王道のラグジュアリーホテル
ホテルライクと聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのがラグジュアリーホテルです。
- 上質な石材
- 深みのある木
- 厚手のカーテン
- ゆったりとしたソファ
- 落ち着いた照明
空間全体に重厚感があり、少し背筋が伸びるような雰囲気があります。
このタイプが向いているのは、華やかさや品格、非日常感を住まいに求める人です。
ただし、注意も必要です。
高級感を出そうとして、光沢のある素材、ゴールド、大理石柄、間接照明をすべて盛り込むと、逆にダサくなります。品格もなくなり、宴会場になっていきます。
ラグジュアリーとは、目立つものを増やすことではありません。
良質な素材を絞り、余白を残し、一つひとつを丁寧に見せることです。
個性を楽しむブティックホテル
大型ホテルのような均一さではなく、その場所にしかない個性を楽しめるのがブティックホテルです。
建築、家具、アート、照明などに明確な世界観があり、ホテルごとにまったく違う表情を持っています。
古い建物を改修したホテルもあれば、現代アートを大胆に取り入れたホテルもあります。
このスタイルが似合うのは、万人受けするきれいな空間よりも、自分らしさのある住まいを求める人です。
- お気に入りのアートを中心に部屋を考えたい
- 少し変わった椅子を置きたい
- 旅先で見つけた家具や器を取り入れたい
そんな人には、ブティックホテル的な考え方がよく合います。
ただし、「個性的なものを全部置く」と、チンドン屋風住宅になります。
主役を決め、周囲を少し静かにすることが大切です。
歴史と色気を感じるパリ風ホテル
パリ風のホテルには、クラシックな建築と現代的なインテリアが自然に同居しています。
- 壁には繊細なモールディング
- 床には深みのある木
- 現代的なソファや抽象画
- シャープな照明
すべてを新品で揃えた完璧な空間というより、時間の積み重なりを感じさせるのが特徴です。
パリ風が向いているのは、上品さの中にも文化や人の気配を感じたい人です。
あとは、3度の飯よりもパリが好きな人。
クラシックが好きだけれど、重たすぎる部屋にはしたくない。
アンティークは好きだけれど、古道具店のようにはしたくない。
その絶妙な間を狙うのが、パリ風です。
猫脚の家具を一脚置けばパリになるわけではありません。それでパリになるなら、クラシック家具の売り場は、ほぼシャンゼリゼ通りです。
大切なのは、家具の背景となる床、壁、建具、光まで含めて考えることです。
静かな高級感を持つQuiet Luxury
最近注目されているのが、Quiet Luxury、つまり「静かな高級感」です。
ブランド名が大きく見えるものや、分かりやすく豪華な装飾ではなく、素材の質や細部の美しさによって上質さを感じさせます。
色はベージュ、グレー、オフホワイト、落ち着いた木の色などが中心。
家具の形も比較的シンプルです。
一見すると控えめですが、近くで見ると、石や木、布の質感がとても美しい。
このタイプは、派手さよりも素材の美しさや空間レイアウトの美しさを大切にする人に向いています。
ただし、色をすべてベージュにすればQuiet Luxuryになるわけではありません。
素材に表情がなく、ただ色だけを揃えると、「静かな高級感」ではなく、日焼け止めの塗りすぎインテリアになってしまいます。
色数を抑える分、素材や陰影の差が重要になります。
自然体で過ごせる北欧ホテル
北欧のホテルは、豪華さよりも居心地を大切にしています。
- 明るい木
- 柔らかなファブリック
- 自然光
- シンプルで使いやすい家具
空間には温かみがあり、気取らずに過ごせる雰囲気があります。
北欧ホテル風が向いているのは、ホテルライクに憧れはあるものの、緊張するような高級感は求めていない人です。
- 家族でくつろぎたい
- 休日の朝をゆっくり過ごしたい
- 自然素材に囲まれて暮らしたい
そんな暮らしと相性が良いスタイルです。
ここでも、木の家具を並べれば完成というわけではありません。
木の色、布の質感、光の入り方、家具のスケールを揃えないと、北欧ホテルではなく「木工製作所風インテリア」になります。
日本らしい静けさを生かす和モダンホテル
和モダンホテルの魅力は、装飾を抑えた静けさにあります。
- 低い家具
- 自然素材
- 障子や格子
- 庭や外部へ抜ける視線
- 侘び寂びの空気感
日本の伝統的な空間には、もともとホテルライクにつながる考え方が多くあります。
すべてを見せず、気配だけを感じさせる。
光を均一にせず、陰影を残す。
家具を増やすのではなく、空間そのものを味わう。
和モダンホテル風は、侘び寂びの空気に触れて心を落ち着けたい人や、季節の変化を暮らしの中で感じたい人に向いています。
ただし、格子と畳を入れれば和モダンになるわけではありません。
和の要素を入れすぎると、おばあちゃんの家風インテリアになってしまいます。
木目の表情、色味、土壁と木のバランス、余白が生み出す静けさ。
和の美しさと日本的な侘び寂びの空気感をどう表現するかがポイントです。
余白を楽しむミニマルホテル
ミニマルホテルは、家具や装飾を必要最小限に抑え、素材、光、空間の構成を際立たせます。
何もないように見えて、実は細部まで考えられている。
線が少なく、色数も少ない。
収納や設備はできるだけ視界から隠され、空間に静けさが生まれます。
このタイプが向いているのは、物に囲まれるより、お気に入りのものだけを美しく見せたい人です。
ただし、単に物を減らせばいいわけではありません。
家具を減らしただけでは、ミニマルではなく単なる「入居前の部屋」になってしまいますし、ホワイトをベースにしただけでは、病室風インテリアになってしまいます。
床、壁、天井、建具の納まりや、光による陰影まで整って初めて、余白がデザインになるのです。
リゾートホテルの開放感を取り入れる
海辺や自然の中にあるリゾートホテルは、外とのつながりを大切にしています。
- 大きな窓
- 風を感じるテラス
- 自然素材
- ゆったりした家具
室内にいながら、外の景色や光を楽しめることが魅力です。
リゾートホテル風は、日常の中に解放感を求める人に向いています。
ただし、日本のマンションに巨大なヤシの木と貝殻の置物を持ち込む必要はありません。
取り入れるべきなのは、南国の記号ではなく、視線の抜けや自然光、風通し、ゆとりある家具配置です。
リゾート感とは、ヤシの木の本数ではなく、気持ちの開放感なのです。
好きなホテルは、一つに決めなくてもいい
ここまでさまざまなホテルスタイルをご紹介しましたが、どれか一つだけを選ぶ必要はありません。
- Quiet Luxuryをベースに、パリ風のアートを取り入れる
- ミニマルな空間に、北欧らしい温かみを加える
- 和モダンの静けさに、ブティックホテルの個性を組み合わせる
むしろ、複数の要素を自分らしく編集することで、住まいに個性が生まれます。
ただし、何でも混ぜればよいわけではありません。
主役となる世界観を一つ決め、別のスタイルはアクセントとして加える。
カレー、寿司、パスタを同じ皿に載せるのではなく、コース料理のように全体の流れを考えることが大切です。
選ぶべきなのは、デザインより「過ごし方」
自分に合うホテルタイプを見つけるとき、写真の好みだけで決めないことも重要です。
そのホテルで、自分がどう過ごしている姿を想像できるか。
- 静かに本を読みたいのか
- 家族でゆっくり食事をしたいのか
- アートや家具を眺めて楽しみたいのか
- 自然光の中で、何もしない時間を過ごしたいのか
理想の過ごし方が分かれば、必要な空間も見えてきます。
ホテルライクとは、ホテルの見た目を自宅へ運び込むことではありません。
自分が心地よいと感じるホテルの体験を、毎日の暮らしに合う形へ翻訳することです。
あなたが憧れているのは、華やかなラグジュアリーホテルでしょうか。
文化を感じるパリのホテルでしょうか。
それとも、静かな北欧のホテルでしょうか。
まずは、心に残っているホテルを思い出してみてください。
どんな家具があったかよりも、そこでどんな気持ちになったか。
その記憶の中に、あなたらしいホテルライクな家をつくるための答えが隠れているはずです。
