ダサいデザイン」が、あまりにもったいない理由。
3LDKや4LDKのマンションをリノベーションする。
間取りを変え、床を張り替え、キッチンを交換し、壁や天井を整え、照明を選ぶ。
工事内容にもよりますが、これだけのリノベーションを行えば、決して小さくない金額がかかります。
だからこそ、私たちは一度考えてみてほしいと思っています。
同じようにお金をかけるのであれば、なぜ「普通の家」で終わらせる必要があるのでしょうか。
ダサくても、洗練されていても、お金はかかる
リノベーションには、デザイン以前に必要になる費用があります。
- 解体工事
- 電気工事
- 給排水工事
- 下地工事
- 床・壁・天井の仕上げ
- キッチンや浴室などの住宅設備
これらは、完成した空間がおしゃれでも、そうでなくても必要になるものです。
もちろん、使用する素材や設備、造作の内容やグレードによって金額は変わります。
しかし、ここで重要なのは、
「ダサい家なら、ほとんどお金がかからない」というわけではない
ということです。
数百万円、場合によっては1,000万円、2,000万円というお金をかけて、高級素材を使っても、その組み合わせ、色、照明、家具とのバランス、空間全体のプロポーションが整っていなければ、完成するのは「新しくなった、ダサい高級な家」です。
一方、同じように床があり、壁があり、キッチンがあり、照明がある空間でも、それらが一つの世界観として美しく設計されていれば、毎日目にする景色はまったく違うものになります。
要は、高級か高級でないかではなく、どうすれば美しく、心地よい空間になるかなのです。
どうせ大きなお金をかけるなら、洗練されている方がいい。
極めてシンプルな話です。
「好きな家」は、単なる自己満足ではない
そして、住まいのデザインは、単に「おしゃれか、ダサいか」という表面的な話だけではありません。
九州大学の有馬雄祐氏らは、「家が関連する主観的幸福」について研究しています。
2024年に日本建築学会環境系論文集に掲載された研究では、家に関連する幸福について、「家への満足」「家での感情」「家から得られるエウダイモニア」という3つの因子から捉えられることが示されています。
さらに、家から得られるエウダイモニアには、「美的経験」も構成要素として含まれています。
ちなみに、エウダイモニアとは、心身の健康や幸福度を指す言葉で、ウェルビーイングの指標として近年重要視されてきています。
2025年の研究では、関東地方の居住者2,000人のデータを用いて、こうした「家が関連する主観的幸福」を測定する尺度の信頼性・妥当性についても検証されています。
つまり、美しい空間や自分が好きだと思える住まいについて考えることは、単なる贅沢や見栄の問題ではありません。
自分が毎日を過ごす場所と、自分自身の幸福感との関係を考えることでもあるのです。
でも、本当は研究を読まなくても知っている
もっとも、こうした科学的な研究を知らなくても、多くの人はすでに感覚的に知っているのではないでしょうか。
- 旅行先で素晴らしいホテルの部屋に入った瞬間
- 美しいレストランで食事をしている時間
- 好きな家具や照明に囲まれた空間で、静かにコーヒーを飲んでいるとき
「なんだか心地いい」
「ずっとここにいたい」
そんな感覚を経験したことがある人は少なくないでしょう。
逆に、雑然とした空間や、自分の感性とは合わない空間にいると、理由をうまく説明できなくても落ち着かないことがあります。
空間は、毎日目に入ります。
朝起きたとき。
仕事から帰ってきたとき。
家族と食事をするとき。
休日にソファで過ごすとき。
だからこそ、住まいのデザインは「最初に見たときだけ感動するもの」ではありません。
その空間から受け取る小さな心地良さを、何年、何十年と積み重ねていくものです。
では、施工会社は「このデザイン、ダサいですよ」と教えてくれるのか
ここには、リノベーション業界特有の難しさがあります。
一般的な施工会社の担当者が、あなたの選んだデザインを見て、
「その組み合わせは、正直あまり洗練されていません」
と教えてくれるでしょうか。
おそらく、多くの場合はそうではありません。
これは施工会社が悪いという話ではありません。
施工会社の重要な仕事は、予算や工期を管理し、安全に、正しく工事を完成させることです。
また、デザインには好みがあるため、お客様が選んだものを強く否定することも簡単ではありません。
「この床に、この壁紙で大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「このキッチンの色は合いますか?」
「問題ないと思います」
そうして一つひとつの選択は成立しているのに、完成して全体を見ると、
「別に変ではない。でも、なぜか格好よくない」
という家が生まれることがあります。
空間デザインで難しいのは、個々の商品を選ぶことではなく、空間全体を一つの世界観として成立させることだからです。
3LDK・4LDKだからこそ、デザインを妥協しない
3LDKや4LDKのマンションは、多くの家族にとって生活の中心になる場所です。
LDKだけではありません。
玄関を開け、廊下を通り、リビングへ入り、キッチンで料理をし、寝室へ向かう。
住まいは、それらすべてがつながった一つの体験です。
だからこそ、設備を新しくするだけではなく、
「この家で、どんな気分で暮らしたいのか」
まで考えてみてほしいのです。
- ミニマルな空間が好きなのか
- ホテルのような緊張感と静けさが好きなのか
- 素材の陰影を楽しむ、落ち着いた空間が好きなのか
大切なのは、流行っているデザインを選ぶことではありません。
自分が本当に好きだと思える世界観を見つけ、それを住まい全体で実現することです。
リノベーションには、大きなお金がかかります。
そして完成した住まいでは、その後、何年も暮らしていきます。
ダサくても、お金はかかる。
洗練された空間をつくっても、お金はかかる。
それならば、毎日帰りたくなる家に、お金を使った方がいい。
3LDK、4LDKという大切な住まいをリノベーションするのであれば、「新しくなった」だけで終わらせるのは、あまりにもったいないのではないでしょうか。
