リノベーションで一番もったいないのは、失敗することではない。
リノベーションで失敗したくない。
そう思うのは、当然のことです。
決して小さくないお金をかけて、これから何年、何十年と暮らす住まいをつくるのですから。
だからこそ、多くの人がたくさん調べます。
- キッチンはどれが使いやすいのか
- 床はどの素材がいいのか
- 壁の色はこれでいいのか
- 収納は足りるのか
- コンセントの位置は大丈夫か
もちろん、どれも大切です。
設備選びを間違えて、使いにくくなってしまった。
床材を選んだものの、思っていた質感と違った。
壁の色が、完成してみるとイメージより暗かった。
照明の位置をもう少し考えればよかった。
こうした失敗は、できるだけ避けるべきです。
でも、私たちは思います。
リノベーションで一番もったいないのは、こうした物理的な「失敗」ではない。
実は、もっと大きな「もったいない」があると思うのです。
すべて新しくなった。でも、「ここに住みたい」とは思えない。
設備は新しくなった。
キッチンもきれいになった。
床も壁も張り替えた。
収納も増えた。
予算も、労力も時間も、それなりにかけた。
工事にも大きな問題はなかった。
つまり、リノベーションそのものは「成功」している。
でも、完成した家を見たときに、
「ここに住みたい」
と心から思えない。
決して嫌いなわけではない。
不便でもない。
失敗したとも言えない。
でも、心が動かない。
「まあ、こんなものかな」
という気持ちが、どこかに残っている。
私たちは、この状態こそが、リノベーションにおいて、実は最ももったいないことの一つだと思うのです。
なぜなら、リノベーションの効果は、家を新しくすることだけではない。
本当に「好き」だと思える住空間には、心地良く豊かな日常を演出し、時間の感じ方を変える力を持っていると思うからです。
物理的な失敗は直せる。でも、感情の未達は残り続ける。
たとえば、照明を選び間違えたのであれば、交換できるかもしれません。
壁の色が気に入らなければ、塗り直したり、壁紙を張り替えたりすることもできます。
家具が合わなければ、買い替えるという方法もあります。
もちろん費用はかかりますが、物理的な問題の多くには、何らかの修正方法があります。
一方で、
「この家が、心から好きではない」
という感情は、少し厄介です。
原因が一つではないからです。
床だけを変えれば解決するわけでもない。
キッチンだけを変えればいいわけでもない。
照明だけでも、家具だけでもない。
空間全体の世界観が、自分の感性と少しずつずれている。
だから、どこか一か所を交換しても、その違和感はなくならない。
それでも、その住まいで、これから10年、20年と日常が続いていく。
小さな「まあ仕方ないか」が、10年、20年続いていく。
リノベーションの完成直後は、小さな違和感かも知れません。
でも、住まいは毎日使うものです。
- 朝、起きてリビングへ行く
- キッチンでコーヒーを淹れる
- 家族と食事をする
- 仕事から帰ってくる
- ソファでくつろぐ
- 休日を家で過ごす
- そして夜、照明を落として一日を終える
それが365日続きます。
10年なら約3,650日。
20年なら約7,300日です。
それなりに大きなお金をかけて、
「まあ、仕方ないか」を積み重ねて行くか、
「この家、本当に好きだな」を積み重ねていくか。
この差は大きく、10年、20年という時間で考えれば、その差はより大きくなっていくと思うのです。
大切なのは「失敗しないこと」だけではない。
リノベーションを進めていると、いつの間にか、自分の住みたかった家、自分が望んだ空間が分からなくなってくることがあります。
特に、床材や壁材、天井、色味、仕上げ仕様や照明など、細かい仕様を決めることが目的化してしまうと、最終的につくりたかった空間が分からなくなる。
結果的に手に入れた住まいが、「嫌いではないけれど、心から好きでもない家」だと、とても残念だと思うのです。
リノベーションは、住まいの空間を創り直すことで、日常を豊かに変え、時間の流れを豊かに変える力を持っているのに、家が新しくなったという物理的な効果だけではもったいない。
せっかく大きなお金と時間を使うのであれば、
「失敗しなかった」
ではなく、
「この家にして、本当によかった」
と思えるリノベーションであってほしい。
私たちはそう考えています。
「何を選ぶか」より先に、「どう暮らしたいか」を考える。
では、どうすればいいのでしょうか。
まず考えてほしいのは、キッチンのメーカーでも、床材の品番でもありません。
「どんな世界観の家で、どんな時間を過ごしたいのか」
ということです。
ミニマルな美しい空間で、朝、自然光の入るダイニングでゆっくりコーヒーを飲みたい。
仕事から帰ってきた瞬間、気持ちが切り替わるような静かで温かみのある空間にしたい。
休日は、出かけなくても、木の質感や香りのする家で過ごすこと自体を楽しみたい。
モダンで洗練されたラグジュアリーな空間で、家族や友人を招いて、長い時間食卓を囲みたい。
少しNYっぽい、インダストリアルな空間で、好きな音楽を聴きながら、一人で本を読む時間を大切にしたい。
そうした「暮らしたい世界観や過ごしたい時間」が先にあって、そのために間取りや素材、照明、家具、設備がある。
住まいが変われば、時間の流れも変わる。
心から好きな住まいを手に入れることの価値は、単に「おしゃれな家に住める」ことではありません。
- 家に帰るのが少し楽しみになる
- 朝、少しだけ早く起きて、リビングで過ごしたくなる
- 休日、何も予定を入れずに家にいることが心地良くなる
- 家族と食卓を囲む時間が長くなる
- 一人で静かに過ごす時間を大切にするようになる
住まいが変わることで、日常の時間の流れそのものが、少しずつ良い方向へ変わっていく。
そこに、リノベーションの大きな価値があるのではないか、私たちはそう考えています。
妥協ではなく、「心から満足できる家」を。
もちろん、リノベーションには予算があります。
マンションであれば、構造や配管、管理規約などの制約もあります。
すべての希望を100%実現できるとは限りません。
だから、何かを諦めなければならない場面もあるでしょう。
ただし、
制約があることと、心から好きな住まいを諦めることは、同じではないのです。
限られた条件の中でも、自分が何を美しいと思うのか。
どんな空間なら心地良いのか。
どんな時間を、この家で過ごしたいのか。
そこだけは、最後まで大切にしてほしいと思います。
リノベーションで一番もったいないのは、床材を間違えることでも、キッチンの色を間違えることでもない。
大きなお金と時間をかけて住まいをつくり直したのに、
「この家、好きだな」と、心から思える家にならなかったこと。
そして、その小さな感情の未達とともに、10年、20年を過ごしてしまうことです。
せっかくリノベーションをするのであれば。
「これでいい」と思える家ではなく、
「ここがいい」と思える家を。
毎日の生活の時間が、少しずつ良い方向へ変わっていくような住まいを。
それこそが、お金と時間と労力をかけたリノベーションで、本当に手に入れてほしいものだと思うのです。
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